人生半ばの40代になってから、しっかりとした目的をもって英語学習を始める人がいる。
30代でも40代でも、これから英語を学ぼうとする人はたくさんいて、それは本当に素晴らしいことだと思う。他人事のように書いているが、私自身も大人になってから英語を学び始めた一人だ。だけど、私の場合は、ここまで明確な目的があったわけではなかった。
40代で学ぶことについては、過去に記事にしたことがある。(過去記事:40代で英語を学ぶ理由なんて、あとからついてきた)
目的の有無にかかわらず、40代前後で英語を始めようと思ったときに多くの人が感じる悩みがある。それが「どこから手をつければいいのか分からない…」というものだ。
最終的なゴールは、読・書・聞・話の4技能すべてを高めて「英語を使いこなせるようになること」。でも、ゴールまでの道のりは、自分で見つけていかなければならない。
多くの人は、「英語を使いこなせるようになりたい」と思い描きつつも、それではあまりに漠然としているため、「とりあえず英検やTOEICの勉強をしよう」と考えるはずだ。
英語の資格試験はいろいろあるが、初心者が思い浮かべるのはおそらくこの2つ。ただ、この2つの試験は、どちらも英語力を測るものではあるものの、内容や目的が大きく異なる。
それぞれの試験の特徴や方向性を知らなければ、どちらを受けるべきか迷ってしまうのも当然だ。
結論から言えば、私の経験上、「まずTOEICに取り組み、ある程度のスコアに達してから英検2級や準1級に挑戦する」ルートをおすすめしたい。
もちろん、他のやり方で英語力を高めていく人もいる。どんな方法であれ、やり切れば成果につながるのは間違いない。ただ、大人が英語学習を楽しみつつ、実用性も重視して学ぶなら、やはりTOEIC→英検の順が効果的だと感じている。
この記事では、英語初心者の40代にこそTOEICから始めることをおすすめする理由や、効率的な学習法、さらにTOEICの後に英検に挑戦した実体験も交えながら、詳しく話していこうと思う。
英検とTOEICの違いをおさらい
まずは、英語資格の中でもよく比較される「英検」と「TOEIC」の違いを簡単に整理しておこう。
英検(実用英語技能検定)
日本で長年親しまれている英語の資格試験。リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの4技能をバランスよく測定できるのが特長。
級ごとに合否が判定されるほか、スコアでもおおまかな英語レベルを知ることができる。
学生や受験生に人気の高い資格。
TOEIC(Test of English for International Communication)
主にビジネスシーンでの英語運用能力を測る試験。基本はリスニングとリーディング(※スピーキング・ライティングは別テスト)で構成されており、合否ではなくスコアで実力を評価される。
社会人や転職活動中の人に役立つ資格として知られ、実用的な英語力の目安になる。
40代の初心者に、最初にTOEICをおすすめする5つの理由
英語の資格試験として、まず英検とTOEICのどちらを受けるか迷う人は多い。
そんな中で、私が40代の初心者にTOEICをすすめる理由を5つにまとめてみた。
1.スコア制だから、「成長」が目に見えて分かる
TOEICの最大の特長は、合否ではなくスコア(10~990点)で評価されること。
最初は低くても、少しずつスコアが上がっていくのが実感できる。
「前回より50点アップした!」という小さな成功体験が積み重なって、学習のモチベーションが続きやすくなる。
挫折しがちな初心者にとって、これは大きなメリットだ。
2.スコア制だから、受験費用がムダにならない
TOEICの受験費用は7,810円(2025年4月末現在)。決して安くはないが、「不合格」がない試験なので、費用がムダになりにくい。
どんなスコアであっても結果が残り、学習の指標になるのが心強い。
3.実用的な英語力が身につく
TOEICでは、ビジネスや日常生活に直結したシーンが多く出題される。
メールのやり取り、電話対応、会議、レストランでの会話など、実社会で役立つ内容が中心。
「海外旅行で困らない英語を身につけたい」「仕事で英語を使いたい」と思う人にはぴったりの試験。
4.気軽に何度でも挑戦できる
TOEICは年間を通じて頻繁に実施されており、全国各地で受けやすい。
スコア制だから「今回は〇点、次はもっと上を目指そう」と、自分のペースで挑戦できる。
「落ちたらどうしよう…」という不安が少ない分、気軽にトライできるのも魅力。
5.まず「読む・聞く」から始められる
TOEICのL&R(リスニング&リーディング)テストは、話す・書くスキルを問われない。
初心者にとって、いきなりスピーキングやライティングに挑むのはハードルが高いが、TOEICならまず「読む」「聞く」に集中して取り組める。
無理なく始められるので、「英語の勉強って楽しいかも」と思えるきっかけになりやすい。
TOEICは出題内容がネタになる面白さがある
TOEICには、出題される内容そのものが「面白い」「ネタになる」とSNSやブログでたびたび話題になる特徴がある。
たとえば、TOEICの問題に登場する職場は「ホワイトすぎる」と言われるほど理想的で、従業員にとても優しい環境が描かれている。
実際に「TOEICのホワイトすぎる職場集」として公式サイトでも特集されたことがあり、受験者の間では「この世界の会社に就職したい!」と冗談交じりに語られることもある。
さらに、TOEICのリスニングやリーディングの登場人物たちは「楽観的すぎる人々」や「トラブルが起きても誰も怒らない世界」など、現実ではなかなか見かけないような独特の世界観で描かれている。
例えば、空港でスーツケースが壊れても、フライトが遅れても、登場人物たちは落ち着いて温厚に解決する。悪質なクレーマーもいなければ、理不尽な上司も出てこない。
このようなユニークで平和的な世界観は「TOEICランド」と呼ばれ、受験者の間で“あるあるネタ”として盛り上がることも多い。
このように、TOEICの問題は「現実離れした平和な世界」や「毎回似たようなシチュエーションが繰り返される」といった特徴があり、勉強しながらクスッと笑える要素もある。
英語の勉強が「ただの試験対策」ではなく、ちょっとしたエンターテイメントになるのも、TOEICならではの魅力だと言える。
体験談 TOEICから始めて、英検の勉強にうつってよかった!
「なんとなく」から始めたTOEIC。でも、そこから英語が楽しくなった
最初に英検じゃなくてTOEICを受けようと思ったのは、正直なんとなくだった。
合否がないから受験料がムダにならないし、就職や実用的な英語力にも役立つと聞いて、「まあ試しに受けてみようかな」と軽い気持ちで申し込んでみた。
初めてのスコアは600点。それなりに勉強したつもりでも、実際の試験では思った以上に難しくて、リスニングのスピードにもついていなかったのを覚えている。けれど、「また挑戦してみよう」と思えたのは、TOEICがスコア制だったおかげだ。少しずつ点数を伸ばしていく手応えがあって、「前より理解できたかも」と感じられることが、学習のモチベーションになっていた。
TOEICでは身につかない力を、英検で補えた
1年ほど勉強を続けた結果、スコアは845点にアップ。
単語集の『金のフレーズ』で語彙を強化したり、公式問題集をくり返し解いたり、意味のとれない文は文構造を細かく確認して精読したり……。地道な勉強の積み重ねで、確実に読むスピードも上がっていった。
でも、ふと気づいたことがあった。
「話すことや書くことを、まったく練習してないな」と。
TOEICはインプット中心の試験なので、アウトプットの練習はまったくできていない。実際に英語を使うシーンを考えたとき、これはちょっともったいないなと感じ、次のステップとして英検の勉強を始めることにした。
英検では、スピーキングやライティングの対策をすることで、TOEICでは触れてこなかった文法の細かい部分や、英文のロジックの作り方を学ぶことができたように思う。「この単語、TOEICでも見たけど、使い方が全然違う!」という発見も多く、語彙の使い分けやニュアンスの違いを意識するようになったのも大きな収穫だった。
TOEIC+英検で、英語力が一気に広がった!
今では、そのときの英検対策を通じて、スピーキングやライティングにも自信が持てるようになってきた。
とくにスピーキングでは、「日本語から英語に訳す」のではなく、「英語でそのまま考える」感覚が少しずつ育っていった。英語のまま意見をまとめて話したり、ライティングで論理的な文章を構成したりする力が身についたことで、「英語らしい考え方」ができるようになった実感を持てるようになった。
そのおかげで、英文を読むスピードも自然とアップ。英語で読む・聞く・話す・書くという4つの技能がつながって、ようやく「英語を使える」という感覚に近づいてきた気がする。
TOEICで英語の基礎体力をつけてから、英検でアウトプット力を鍛える。
この順番で学んだことで、自分の英語力がバランスよく伸びたのを実感できた。最初にTOEICから始めて本当によかったなと思っている。
40代からのTOEIC学習法のコツ
1. まずは「聞く・読む」から始めよう
TOEICはリスニングとリーディングが中心なので、まずは「英語を聞く・読む」ことに慣れるのが大切。
公式問題集のリスニング音声や、YouTubeの英語学習チャンネル、英語ニュース、アプリなどを活用すると、効率よく英語に触れられる。
なかでも、英語版Yahoo!ニュースの記事は、TOEICに出てくる単語や表現がよく使われていておすすめ。幅広い世代が読めるような内容で、やさしすぎず難しすぎない英文なので、TOEIC学習にちょうどいい素材になる。
2. 毎日少しずつ、継続がカギ
40代は仕事や家庭などで忙しいことが多いけれど、1日10分でもいいから、毎日英語に触れる時間をつくるのがいちばん大切。
本当に、「続けること」が英語学習のカギになる。
たとえば、スキマ時間に単語アプリを使ったり、リスニング教材を聞いたり、覚えにくい単語は付箋に書いてスマホや冷蔵庫など目につく場所に貼っておくのもおすすめ。
どんな形でもいいから、毎日ちょっとずつ英語にふれる習慣をつけることが、長い目で見ると一番の近道になる。
3. 目標スコアを決めてみよう
「半年後に500点を目指す」など、具体的なスコアを設定しておくと、学習計画が立てやすくなる。TOEICはスコアが数字で見えるので、達成感を感じやすいし、やる気にもつながる。
また、TOEICは「試験に慣れること」自体がスコアアップに直結するので、過去問を何度も解くのがおすすめ。
試験時間いっぱい英語に触れても疲れにくいように、少しずつテスト慣れしておくと、本番でも落ち着いて力を出せるようになる。
まとめ
40代から英語を始めるのは、決して遅すぎるなんてことはない。ただ、時間や環境などに制約があるからこそ、できるだけ効率よく学習を進めていきたいところ。そんな中でおすすめしたいのが、まずはTOEICで基礎力をつけてから、次のステップとして英検にチャレンジするルートだ。
TOEICは、スコアで成長を実感できるうえに、何度でも気軽に受験できる試験。受験費用との兼ね合いもあるけれど、「気軽にチャレンジできる」という点は大きな魅力である。実用的な英語力も身につきやすく、学習のモチベーションを保ちやすいなど、初心者がTOEICを受験するメリットはたくさんある。
そして、英検ではスピーキングやライティングといったアウトプット力が問われる。だからこそ、TOEICで培った英語力を、もう一段階レベルアップさせるに、英検はとてもよい選択肢だと思う。
わたし個人の意見ではあるけれど、大人になって英語を学び直すなら、まずはTOEICから始めて、自分のペースで一歩ずつ英語力を伸ばしていってほしい。
そうやって英語を学んでいくことで、自分の世界が少しずつ広がっていくのを感じられるはずだ。
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